- 大腸がんと大腸ポリープ
- 大腸ポリープとは
- 大腸がんとは?
- 大腸がんと大腸ポリープの違い
- 大腸ポリープが大腸がんになる確率
- 大腸ポリープの症状、大腸がんの前触れ
- 大腸がんに気づくには?
- 大腸ポリープ・大腸がんの原因とリスク因子
- 大腸ポリープ・大腸がんの検査方法
- 当クリニックの日帰りポリープ切除術
- 大腸がんの治療法
- ポリープ切除術のよくある質問
大腸がんと大腸ポリープ
大腸ポリープは、前がん病変と言われることのある疾患です。大腸ポリープが大きくなると、がんに変異する可能性が高くなります。そのため、大腸がんを効果的に予防するには、定期的に大腸カメラを受けて、ポリープを発見した時点で切除することが大切です。
大腸ポリープとは
大腸ポリープとは、大腸の粘膜がイボ状に盛り上がったものの総称です。
初期段階ではおよそ数ミリメートルと小さいですが、大きくなると数センチメートルにまで大きくなるものがあります。
大腸ポリープの中でも、腺腫性ポリープはがん化のリスクが高い疾患です。大腸がんが進行しても無症状のままであることも多いため、便潜血検査や大腸カメラ検査といった検査と治療が重要になります。
大腸がんとは?
現在の日本では、S状結腸と直腸に大腸がんができやすい傾向にあります。また、大腸がんは、死亡原因として男女ともに上位を占めています。
血縁者に大腸がんに罹患したことのある方がいると、発症しやすい傾向にあるため注意が必要です。また、肥満や飲酒、加工肉を好んで食べていると、大腸がんのリスクが高くなります。喫煙にも同様のことが言えるため、生活習慣を見直すようにしましょう。
大腸がんと大腸ポリープの違い
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる良性の突起物です。ポリープの多くは無害ですが、一部は時間とともにがん化する可能性があります。
一方で大腸がんは、ポリープが悪性化した状態のことを指します。進行すると大腸以外の臓器に転移することもあるため、定期的な検査が欠かせません。
大腸ポリープが大腸がんになる確率
大腸ポリープは多くの場合良性ですが、一部のポリープは時間とともに悪性化し、大腸がんに進行するリスクがあります。ここでは、大腸ポリープががんになる確率についてご説明します。
ポリープの種類によるリスク
大腸ポリープにはいくつかの種類があり、種類によってがん化するリスクが異なります。
腺腫性ポリープ(腺腫)
腺腫はがん化するリスクがあるポリープで、全ての大腸ポリープの中で最もがんに関連しています。特に大きなポリープや形状がいびつなものほどリスクが高くなります。
腺腫性ポリープが10年以上放置された場合、20〜30%ががんに進行するとされています。
鋸歯状ポリープ(鋸歯状腫瘍)
鋸歯状ポリープは、その一部ががんになるリスクを持っています。特に「鋸歯状腺腫」と呼ばれるタイプは、大腸がんのリスクが高いとされています。
鋸歯状腺腫のうち、1cm以上のものはがん化するリスクが高いです。
過形成ポリープ
一般的にはがん化するリスクが非常に低いとされていますが、一部の場合には鋸歯状腺腫と同様にがん化のリスクが考えられることもあります。
大きさによるリスク
ポリープの大きさもがん化リスクに大きな影響を与えます。
5mm未満のポリープ
ほとんどが良性でがん化するリスクは非常に低いです。
1cm以上のポリープ
がん化のリスクが高まり、特に2cmを超えるポリープは注意が必要です。
大腸ポリープの症状、大腸がんの前触れ
ポリープの有無やがん化の兆候を見つけるには、定期的な検査が重要です。
大腸ポリープの症状や、大腸がんの前兆となる可能性が高いサインについてご紹介します。
血便や便の色の変化
便に血が混ざったり、黒っぽい便(タール状の便)や赤い便が出たりする場合は、大腸がんや他の消化器系に異常が起きている可能性が高いです。
ですが、痔や他の原因でも血便が起こることがあるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
便通の変化
便秘や下痢が長期間続いている場合は、注意が必要です。特に、便通が不規則になったり、便が細くなったりする場合は、大腸に何らかの異変が起きている可能性が高くなります。
お腹の痛みや不快感
大腸がんが進行すると、お腹に痛みや不快感が現れます。特に、腸が詰まるような感覚や腹部膨満感が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
体重減少や食欲不振
大腸がんの前兆として、食生活に異変がなくても急激な体重減少が見られることがあります。また、食欲不振に陥ることも、大腸がんが進行しているサインです。
疲労感や貧血
大腸がんが進行すると、慢性的に腸内で出血し続けます。そうすると、貧血や疲れやすさを感じるようになり、採血検査で鉄欠乏性貧血と診断されることがあります。
腸閉塞など
ポリープが肥大して大腸を塞ぐと、腸閉塞を発症する恐れがあります。また、稀にポリープが肛門から飛び出してしまうケースもあります。
その他の症状
その他、ポリープができることにより消化や吸収が行われにくくなります。顕著な体重減少が見られる際には、大腸の疾患が疑われます。
大腸がんに気づくには?
大腸がんは、早期発見・早期治療が大切です。
早期発見に繋がるきっかけには、下記のようなものがあります。
便潜血検査が陽性
自治体や勤務先の健康診断で行われる便潜血検査は、便の中に含まれる血液を検出する検査です。
大腸がんであれば必ず出血するわけではありませんが、スクリーニング検査として広く普及しています。
血便が出た
大腸がんに罹患すると、がん組織がより多くの栄養を得るための「新生血管」が作られます。新生血管はもろく、便と擦れると簡単に出血します。
血便は、大腸がんの症状の中でも頻度の高い症状の一つです。血便に気づいた際には、医療機関で大腸カメラ検査を受けましょう。
貧血になった
大腸がんから出血が続くとすると、貧血になりやすくなります。
ですが、女性が貧血になっても、月経で起こる身近な症状であるため、医療機関の受診に至らないケースがほとんどです。
大腸がんの症状として貧血となることもあるため、症状が続く際には医療機関に相談しましょう。
お腹の痛み・張り
腫瘍が原因となって便通が悪くなると、腹痛や腹部の張りを感じることが多くなります。
ですが、盲腸や上行結腸、横行結腸では便が固形になっていないこともあり、腹痛がはっきりと現れないこともあります。
体重が減った
がんの発生により、多くのタンパク質と脂肪が分解されていきます。そうすると、食事や運動習慣は変わらないのに体重が減少するといった症状に繋がります。
1ヶ月に3kg以上体重が減った場合には、医療機関を受診しましょう。
腸閉塞になった
腫瘍が大きくなると、便が腸内を通過できなくなります。
腸閉塞には、腹痛や吐き気、嘔吐といった症状が現れます。重症化すると、緊急手術が必要です。
大腸ポリープ・大腸がんの原因とリスク因子
大腸ポリープや大腸がんは、遺伝的要素との関連が高い疾患です。結腸や直腸に、100個以上のポリープができる家族性大腸腺腫症や、大腸や子宮に遺伝性の腫瘍が同時に発症するリンチ症候群などがあります。
大腸がん全体では、およそ5%程度が遺伝性のものとされています。
大腸ポリープ・大腸がんの検査方法
大腸ポリープや早期大腸がんは、ほとんどの場合無症状で進行します。
そのため、定期的な便潜血検査や大腸カメラ検査が必要です。
当クリニックの日帰りポリープ切除術
大腸カメラ検査でポリープを発見した場合は、その場で切除していきます。1週間程度は食事や生活の制限がありますが、その日のうちに帰宅して翌日からは通常に近い生活ができます。
なお、ポリープの数や大きさによっては、入院による切除が必要です。入院が必要と判断した際には、連携する医療機関を紹介しております。
ポリペクトミー
ポリペクトミーは、大腸ポリープ切除で最も多く採用されている手法です。スネアをポリープにかけて、高周波電流を流してポリープを焼き切ります。
電気メスのような止血効果を得られることがありますが、術後数日して出血や穿孔を起こすリスクがあります。
コールドポリペクトミー
コールドポリペクトミーは、スネアをポリープにかけ、締め付ける力で切除する手法です。
切除の際に出血することがありますが、ほとんどの場合すぐに止血します。熱が発生しないため、術後の出血や穿孔のリスクを大幅に減らせるメリットがあります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦でそのままではスネアをかけられないポリープの下層に生理食塩水を注入し、ポリープを持ち上げてスネアをかける手法です。下に生理食塩水があり熱が伝わる心配がないので、高周波電流によって安全に焼き切ることができます。
大腸がんの治療法
大腸がんは、進行程度によって治療法が変わります。
当クリニックでは、早期がんに対する内視鏡的切除を行っております。それ以外の治療が必要と判断した際には、提携する医療機関を紹介いたします。
早期の大腸がんの治療
早期の大腸がんの治療には、内視鏡での切除が可能です。
ですが、がんの範囲によっては、手術が必要になることがあります。
進行した大腸がんの治療
進行大腸がんについては、リンパ節に転移している可能性が高くなるため、原則として手術が必要です。
また、転移が認められた際には、化学療法を併用して治療します。
ポリープ切除術のよくある質問
ポリープ切除は痛いですか?
胃や大腸の粘膜には神経がないため、切除の際に痛みを感じる恐れはありません。
ポリープ切除をしたら何日休むべきですか?
デスクワークをしている方は、ポリープ切除後は4日間程度の休みが必要です。身体を動かす仕事の場合は、1週間は休むようにしましょう。
ポリープ切除後は、出血が起こる危険性があるため無理は禁物です。
大腸ポリープ切除は手術になるのですか?
大腸ポリープ切除は、健康保険が適用される手術です。3割負担の場合は、ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術で2~3万円を目安にすると良いでしょう。
なお、任意の生命保険・入院保険に加入している場合は、手術給付金を受け取ることができる可能性があるため、加入している保険会社へお問い合わせください。
大腸ポリープ切除後の食事はどうすればいいですか?
当日は、白粥や素うどんといった消化しやすいものを食べましょう。手術翌日に腹痛や出血がなければ、消化の良いものから少しずつ通常の食事に戻します。
大腸ポリープ切除後の行動制限はありますか?
ポリープの大きさや切除手法、切除数などで制限は異なりますが、術後1週間程度は、腹圧のかかる運動、飲酒、長時間の移動は控えましょう。