- 原因不明の胃腸の不調「機能性ディスペプシア」
- 機能性ディスペプシアの症状チェック
- 機能性ディスペプシアの原因は自律神経？
- 機能性ディスペプシアの検査
- 機能性ディスペプシアの治し方
- 機能性ディスペプシアを改善する食べ物
原因不明の胃腸の不調「機能性ディスペプシア」
機能性ディスペプシアとは内視鏡検査などを行っても異常が認められないものの、長期間にわたって胃の不調が続く病気です。原因の特定が難しいため、かつてはストレス性胃炎や神経性胃炎、慢性胃炎などと診断されることもありました。
しかし近年はそれらの病気と区別することが望ましいとされ、症状があっても検査での異常所見が認められない特徴があることから、新たに機能性ディスペプシアという概念が作られました。
機能性ディスペプシアの症状チェック
このチェックリストの中で複数の項目に当てはまる場合、機能性ディスペプシアの可能性があります。
症状が続く場合や生活に支障をきたす場合は、早期の診断と適切な治療が必要ですので、早めの受診をおすすめしております。
- 上腹部に痛みや圧迫感を感じることがある
- 食事後にお腹が張る感覚がある
- 食後に消化が悪いと感じることがある
- 普通の量の食事を食べただけで満腹感を感じる
- 胸のあたりに焼けるような不快感がある
- 食後に吐き気を感じることがある
- 腹鳴（お腹のゴロゴロ音）が頻繁に聞こえる
- 短期間で体重が減少したり、増加したりすることがある
- 食欲が低下することがある
- ストレスや不安感を感じることが多く、消化器症状に問題がある
機能性ディスペプシアの原因は自律神経？
機能性ディスペプシアは、胃自体の機能低下と胃の働きが障害されることで発症すると考えられています。
通常は、自律神経によって飲み込んだ食べ物を溜める働き（適応性弛緩）と消化後の食べ物を十二指腸へ送り出す働き（胃排出能）が行われますが、このような胃の働きが障害されることで発症するのです。
胃の働きを障害しうる原因は、以下のことが挙げられます。
胃の運動障害
胃自体の働きが低下した状態です。適応性弛緩や胃排出能が十分に働かないため、胃が膨らまないことですぐお腹いっぱいになり、消化後の食べ物が留まりすぎて吐き気を感じることがあります。
胃・十二指腸の知覚過敏
胃などの消化管には粘膜の状態を随時確認できるセンサーがついていますが、センサーが過敏に作動することで、お水を飲むだけでも吐き気などを感じる状態になります。
過度なストレス・トラウマ
自律神経は、消化管と脳の連絡役や、消化管機能のコントロール役を担っていますが、過度なストレスがかかると自律神経が乱れ、消化管機能の乱れを引き起こします。
生活習慣
偏った食生活や不規則な生活も機能性ディスペプシアの原因になりえます。
例えばジャンクフード・高脂質に偏った食事、刺激の強い飲み物を摂り過ぎる、睡眠不足、過労などが関連します。
胃酸の過剰分泌
生活習慣の乱れや胃の機能低下などによって胃酸が過剰に分泌され、胃の粘膜が傷つくため、消化機能の低下、胃痛、胃もたれが生じます。
ヘリコバクター・ピロリ菌への感染
ピロリ菌感染によって胃の機能が障害されることがあります。さらに胃がん、慢性胃炎などへ悪化することもあるので、早めに治療を受けていただくことをおすすめしております。
機能性ディスペプシアの検査
機能性ディスペプシアの特徴は、検査における異常所見が認められないことにあります。
したがって内視鏡機能性ディスペプシアと似た症状が現れる他の病気（胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃周辺の臓器疾患）がないことを、検査で確認する必要があります。
当クリニックでは胃カメラ検査、血液検査、腹部超音波検査、腹部CT検査、ピロリ菌検査などを受けていただけます。
異常所見の有無に沿って、最適な治療方法もご案内可能ですので、安心してご相談ください。
機能性ディスペプシアの治し方
機能性ディスペプシアの治療には、薬物療法と生活習慣の見直しが欠かせません。
様々な原因によって発症する病気ですので、患者様の生活背景や心理状況に沿った治療を行い、症状改善と再発予防を図ります。
薬物療法
薬物療法においては、診療ガイドラインに定められている胃酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬、ピロリ菌が認められる場合のみピロリ菌除菌薬を使用します。
これらの内服薬でも症状の改善が見込めない場合は、漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬を使用し、関連がある要因の改善を試みます。
生活習慣の見直し
生活習慣や食事習慣の乱れ、心理的な状況も原因となりうるため、個別性に応じて心理ケア・栄養指導を行っております。
機能性ディスペプシアの診断がつくまで症状が長期化する傾向があるため、体調不良による心労もあるでしょう。
ささいなことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
機能性ディスペプシアを改善する食べ物
機能性ディスペプシアを改善するためには、消化に良い食材や発酵食品を積極的に取り入れることが重要です。自身の体調に合わせて食事を工夫し、症状の軽減を目指しましょう。症状が改善しない場合は、専門医に相談することをお勧めします。
消化に良い食材
おかゆや白米
消化が良く、胃に優しい食材です。具材を少なくしてシンプルに食べると良いでしょう。
蒸し野菜
特に人参、カボチャ、ズッキーニなど、消化しやすい野菜が適しています。
低脂肪のタンパク源
鶏肉（皮なし）や魚
脂肪分が少なく、消化がしやすいタンパク源です。
豆腐
植物性のタンパク源で、消化に優れています。
食物繊維を含む食品
果物（バナナやリンゴなど）
消化が良く、食物繊維も豊富です。特にバナナは、胃腸を保護する効果もあります。
オートミール
食物繊維が豊富で、胃に優しい朝食としておすすめです。
発酵食品
ヨーグルト
腸内環境を整えるプロバイオティクスが豊富です。無糖のものを選ぶと良いでしょう。
納豆やキムチ
腸の健康をサポートする発酵食品です。
抗酸化作用のある食品
緑茶
抗酸化物質が豊富で、消化を助ける効果があります。
ベリー類（ブルーベリー、ラズベリーなど）
抗酸化作用があり、炎症を抑える効果も期待できます。
ハーブやスパイス
ジンジャー（生姜）
消化を助ける効果があり、胃の不快感を和らげることが期待できます。
ミント
消化を促進する効果があり、飲み物として摂取すると良いでしょう。
注意点
刺激物の回避
辛い食べ物、酸味の強い食品、カフェイン、アルコールなどは症状を悪化させることがあるため、避けることが推奨されます。
食事の量と頻度
少量ずつ、回数を分けて食べることで、胃に負担をかけないようにしましょう。