- 過敏性腸症候群とは
- 過敏性腸症候群の症状・重症度チェック
- 過敏性腸症候群の種類
- おならが臭い「ガス型」とは
- 過敏性腸症候群の原因
- ストレスで過敏性腸症候群を発症する?
- 過敏性腸症候群の検査・診断
- 過敏性腸症候群の治し方
- 過敏性腸症候群の食べ物一覧と注意点
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は、消化器疾患が生じていないにもかかわらず、突発的な腹痛、下痢、便秘、便秘後に症状消失を繰り返す慢性的な疾患です。命に関わることはありませんが、外出中のトイレ探しや腹部症状による不快感などの負担が生じるため、日常生活が損なわれることがあります。
岩手県盛岡市の小坂内科消化器科クリニックでは、慎重に検査を進め、症状を軽減する対症療法を行っております。心当たりのある方は、お気軽に当クリニックへご相談ください。
過敏性腸症候群の症状・重症度チェック
過敏性腸症候群の主な症状は以下の通りです。以下のような症状が、数週間~数ヶ月続く特徴があります。

- 下痢と便秘を繰り返している
- 排便前の腹痛、不快感が続いている
- 排便後は腹痛、不快感が和らぐ
- 排便しても残便感がある
- 便の形がコロコロとしている
- 排便の回数が不規則に増減する
- ストレスを感じると症状が悪化する
など
また、以下の症状が加わる場合は重症度が高くなり、他の疾患を疑います。
- 便に血が混じる
- 体重が減少している
- 夜間の腹痛で目が覚める
など
過敏性腸症候群の種類
この疾患には「下痢型」「便秘型」「混合型」「分類不能型」といった4つの種類があり、症状の現れ方、特徴、傾向が異なります。この種類に合わせて適切な治療方針を決めていきます。
下痢型
下痢型は、水のような便(水様便)や形が崩れている便、激しい腹痛が主な症状です。
特に、満員電車や面接、試験などの緊張感が高まる状況において突発的に重症化する傾向があります。
便秘型
便秘型は、強くいきんでも便が出ないこと、コロコロとした少量の硬い便、切れ痔、残便感が生じます。
腸のけいれんや蠕動運動の低下が原因と考えられており、女性に多く見受けられる種類です。
混合型
いわば「下痢型」と「便秘型」が交互に現れる状態です。便秘が続く期間と下痢が続く期間が入れ替わるように生じ、排便前に激しい腹痛が伴います。
分類不能型
いずれの種類にも分類できない症状の現れ方をするものは、分類不能型になります。
おならが臭い「ガス型」とは
過敏性腸症候群には先述の4種類以外に「ガス型」があります。おならが溜まりおなかが張る他、頻繁におならが漏れてしまう症状があり、人が多い場所へ行く時の不安や負担が増えてしまうなど精神面への悪影響も懸念される状態です。
ガス型の研究や評価は難しいとされており、はっきりとした原因は解明されていません。現時点で考えられる要因は、炭酸飲料などのガスを発生させる飲食物、乳糖不耐症、呑気症が関わっているのではないかと言われています。
当クリニックではいずれの種類も考慮して検査や治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
過敏性腸症候群の原因
ストレス・自律神経失調症・乱れた食習慣・腸内細菌叢の乱れなどによって腸機能の低下や過敏症が生じて発症すると考えられています。
また、他の腸疾患による粘膜炎症や、遺伝的に腸機能が低下しやすいといった要因も関わります。
ストレスで過敏性腸症候群を発症する?
ストレス自体が直接的に過敏性腸症候群(IBS)を引き起こすというよりも、ストレスがIBSの症状を悪化させたり、発症の一因となることが多いと考えられています。ストレスが腸の働きに影響を与えるメカニズムには以下の要因があります。
腸と脳の相互作用(腸脳相関)
腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる密接な関係があります。強いストレスを受けると脳からの信号が腸に送られ、腸の動きや感覚に影響を与えます。その結果、腸が過敏になり、腹痛や下痢、便秘などの症状が出やすくなるのです。
自律神経の乱れ
ストレスは自律神経を乱し、腸の動きに影響を与えます。ストレスがかかると、腸の動きが過剰に活発になったり、逆に動きが遅くなったりすることがあり、これがIBSの症状を引き起こします。
ホルモンの影響
ストレスによって分泌されるホルモン、特にコルチゾールなどが腸に影響を与えます。これにより、腸内の炎症が進行したり、腸内のバクテリアのバランスが崩れたりして、IBSの症状が悪化することがあります。
過敏性腸症候群の検査・診断
問診
まずは発症前後の経緯や状況を詳しく伺います。
- 最初に症状が出てきた時期
- 便の性状、形、頻度
- 発症のきっかけについて心当たりはあるか
- 食習慣や勤務時間などの生活変化
- 普段から服用している内服薬
- 既往症や治療中の疾患の有無
など
検査
当クリニックでは血液検査、便潜血検査、尿検査、大腸カメラ検査を行います。
特に以下に該当する方は他の疾患が関わっている可能性も考慮して、必ず大腸カメラを受けていただきます。
- 50歳以上で発症している
- 発熱がある
- 3kg以上の体重減少がある
- 直腸出血がある
診断テスト
過敏性腸症候群の診断は、検査で腸粘膜の状態や他の疾患の可能性がないことを確認したのちに、RomeIII基準(2006年に制定された診断基準)を使用して行います。
RomeIII基準
- 排便すると排便前に感じていた不快感が落ち着くようになる
- 排便の頻度が増えたり減ったりする
- 便の形状が以前と変わり、水っぽくなったり硬くなったりしている
直近3ヶ月間を対象に「上記の2つ以上が該当する」かつ「腹部症状が1ヶ月に3日以上の頻度で生じている」といった指標によって診断します。
過敏性腸症候群の治し方
生活習慣の改善
治療の一環として、なるべく心身の回復を促すような食事と生活リズムを整えることが望ましいです。
例えば以下のことを心がけましょう。
- 便秘の場合は、食物繊維や乳酸菌が含まれる食品を摂る
- 下痢の場合は、常温や温かい飲食を摂る
- 香辛料やコーヒーなどの刺激が強い食品は控える
- 入浴で体を温め、疲れを和らげる
- 運動と休息の時間を作りストレスを緩和する
- 同じ時間に就寝と起床のリズムを作る
など
薬物療法
症状の改善が乏しい場合は、患者様の状況に応じた内服薬を使用します。
過敏性腸症候群で使用される薬剤(一部)
- 消化管機能調節薬
- 止痢剤
- 下剤
- 漢方薬
など
これらの薬剤を選択肢として、患者様の持病、生活習慣、勤務時間、内服中のお薬との飲み合わせなどを考慮し、なるべく負担が少ない服用方法を定めてお薬を処方しております。
過敏性腸症候群の食べ物一覧と注意点
過敏性腸症候群の発症や病状進行には、食事内容が深く関わっていると考えられています。欧米の研究では、小腸で消化されにくい発酵食品を摂ると病状を悪化させ、それらの食品を避けることで病状が改善したという症例が報告されました。この小腸で消化されにくい発酵食品は、発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールの糖類であり、それぞれの頭文字からFOODMAPと名づけられました。
しかしこの食事療法が、欧米人と体質や遺伝子が異なる日本人に当てはまるとは言い切れません。あくまで参考としながら、医師と相談の上、食事内容を調節していくことが現実的です。
低FODMAP
当クリニックでは過敏性腸症候群の治療として、FOODMAP成分を多く含む高FOODMAP食を避け、「低FOODMAP食」を摂ることをおすすめしております。
以下の食材を参考に調節しながら、病状変化を観察していきましょう。
なお、診察時に定期的な見直しを行うため、食事内容の記録をつけていただければと思います。
高FODMAP
- 玉ねぎ・にら
- にんにく
- 豆製品
- はちみつ
- 乳製品
- きのこ類
- 人工甘味料
- 小麦粉製品
など
低FODMAP
- 玄米・米・十割蕎麦
- 肉全般・卵
- 魚介類
- 緑茶・紅茶
- 木綿豆腐
- バナナ
- じゃがいも
- バター・メープルシロップ
など
食物繊維について
食物繊維を多く含む食材は消化に時間がかかるため、腸粘膜の回復を妨げる可能性があります。
治療の状況や病状に応じて調節が必要ですので、お気軽にご相談ください。
食べてはいけない物
以下の飲食物は消化吸収に負担がかかり、腸粘膜への刺激も強いことから、できるだけ控えめにしましょう。
- 高カロリー食品
- 高脂質食品
- コーヒーなどのカフェイン入り飲料
- お酒
- 香辛料
など
牛乳やヨーグルトに注意すべき方
乳糖不耐症がある方は、牛乳やヨーグルトを消化吸収しきれずに下痢を誘発することがあるため、乳製品を避けてください。