アニサキスについて
アニサキスは寄生虫の一種で、人の胃腸などの消化管や消化管外にまで寄生し食中毒を引き起こします。
本来はイルカやクジラなどの哺乳類に寄生しているのですが、これらの生物のフンに卵を産みつけるため、体外に出たあとは海中で孵化・幼虫となって漂流します。オキアミなどが幼虫を食べ、さらに魚類がオキアミを食べるといった食物連鎖により、魚を食べる人の口から感染するのです。
仮にアニサキスに感染しても、人の体内では1週間ほどで死滅すると考えられており、無症状で済むこともあります。しかし中には、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発熱へと悪化し、命に関わることもあるため、生魚を食べた後にこのような症状が出た場合は、岩手県盛岡市の小坂内科消化器科クリニックへお早めにご連絡ください。
胃アニサキス症
アニサキス症の中で多く見受けられる病気で、アニサキスが胃壁へ突き刺さった際に生じるアレルギー反応で発症します。
腸アニサキス症
アニサキスが胃壁に寄生せず通過したのち、腸壁へ食いつくことがあります。
稀に腸壁に穴が開いてしまうこと(腸穿孔)、腸が塞がってしまうこと(腸閉塞)へと悪化することがあり、その場合は入院治療が必要です。
消化管外アニサキス症
アニサキスが消化管を突き破って腹腔内へと移行することで発症します。胃腸のアニサキス症と比較して発症頻度の少ない病気です。
アニサキスアレルギー
アナフィラキシーショックの原因として食物、薬物の次に多いと言われているのがアニサキスアレルギーです。消化管内外に共通して起こりうる病状であり、早急な対応が必要になります。
アニサキスの潜伏期間
アニサキスに感染した場合、一般的に数時間から1日程度で症状が現れることが多いです。
しかし、遅れて2~3日後に症状が出ることもあります。
アニサキスの症状
胃アニサキス症
食後3~4時間後に、腹痛、吐き気、嘔吐などが生じます。しかし稀に無症状のまま、健康診断などの内視鏡検査で感染が発覚することもあります。
腸アニサキス症
発症は胃に比べるとやや遅い傾向にあり、食後十数時間~数日後に発熱、下腹部の激しい痛み、嘔吐などが現れます。
消化管外アニサキス症
消化管外の腹腔(大網・腸間膜・腹壁皮下など)に肉芽腫の形成や、炎症を引き起こします。
アニサキスアレルギー
アニサキスアレルギーを持つ方は、青魚を食べたあとに体調が悪くなるリスクがあります。
蕁麻疹のみで済むこともありますが、悪化するとアナフィラキシーショック(血圧低下、呼吸不全、意識障害などの症状)が生じます。
軽度な症状であっても早めの対応が必要ですので、心当たりのある方は、早めに当クリニックへご相談ください。
アニサキスがいる魚一覧
サバ:特に青森県など北日本の海域で捕れるものがリスクが高いです。
イカ:特にスルメイカやヤリイカは、アニサキスの寄生が多いことで知られています。
サンマ:秋の味覚として人気ですが、アニサキスが寄生していることがあるため、生食時には注意が必要です。
ブリ:成魚になると、アニサキスの寄生が多くなることがあります。
タラ:タラの身にもアニサキスが見られることがあり、特に刺身で食べる場合は注意が必要です。
カツオ:生のカツオにもアニサキスが寄生することがあります。
ヒラメ:刺身や寿司で人気ですが、アニサキスのリスクがあります。
マグロ:特に赤身の部分に寄生することが多く、刺身で食べる際は注意が必要です。
アジ:アジの中にもアニサキスが寄生することがあります。
ウニ:ウニの中にもアニサキスがいることがありますが、貝類に比べてリスクは低いです。
アニサキスが
ほとんどいない魚
アニサキスは主に冷水性の魚や特定の海洋生物に寄生する寄生虫ですが、以下の魚はアニサキスがほとんど寄生しないか、寄生リスクが低いとされています。
養殖魚
養殖された魚は、アニサキスの感染リスクが低いため、安全に食べることができます。例としては、養殖の ブリ、サーモン、タイ などが挙げられます。
白身魚
タラ:生食でのリスクはあるが、特に養殖タラはアニサキスが少ないことが多いです。
ヒラメ:アニサキスが少ない魚ですが、他の生の魚と同様に、冷凍処理されたものを選ぶと安心です。
淡水魚
ニジマス:淡水魚であるため、アニサキスのリスクはほとんどありません。
アユ:川に生息する魚で、アニサキスに寄生されることは非常に稀です。
貝類
アサリ、ハマグリ、カキ などの貝類にはアニサキスは寄生しませんが、他の感染症に注意が必要です。
甲殻類
アニサキスは魚類に寄生するため、エビやカニなどの甲殻類には寄生しません。
アニサキスの検査
胃カメラ検査
問診などからアニサキス症が疑われる場合は、早急に胃内視鏡検査を行います。
食後6~8時間経過しているタイミングで検査を行い、胃粘膜に刺入しているアニサキスの虫体が認められれば、その場で除去することも可能です。
なお、腸アニサキスの可能性がある場合は、大腸内視鏡検査を行うことがあります。
血清抗体検査
アニサキス症に感染すると抗体が生じるため、血液検査にて抗体の有無を調べます。
主に腸アニサキス症や消化管外アニサキス症に適応している検査です。
腹部超音波検査
腸アニサキス症の中でも小腸に感染している可能性がある場合に、小腸壁の感染所見や肥厚などがないかエコーで調べます。
アニサキスの治療
胃アニサキス症
内視鏡検査で虫体を確認したのち、胃内視鏡の先端についている鉗子によってアニサキスをつまみ、除去する治療を行います。除去後は、ほとんどのケースで速やかに腹痛などの症状が消え去ります。
腸アニサキス症
アニサキスアレルギーへの抗アレルギー剤や対症療法としての内服治療を行います。
消化管外アニサキス症
きわめて稀な疾患ですが、腹腔内への感染は重篤化することがあります。当クリニックでは、重症度に応じた早急な治療提供はもちろんのこと、さらに専門的な治療を受けられる医療機関への連携も行います。
アニサキスアレルギー
当クリニックではアレルギー反応や付随する症状を改善するための内服薬治療を優先します。
皮膚症状のみの場合は抗ヒスタミン薬を、症状が悪化している場合はステロイド薬やエピネフリンを使用することがあります。
よくある質問
アニサキスは自然治癒しますか?
自然に治る可能性はあります。
一般的にアニサキスは人の体内で栄養が摂れないため1週間ほどで絶命するのですが、胃の環境には個人差があり自然治癒しないこともあります。さらにアレルギー反応、痛み、腸閉塞などを引き起こすこともあるため、アニサキス症を疑う症状がある際はお早めに受診をおすすめしております。
アニサキスは冷凍や加熱で死にますか?
アニサキスは60度以上で1分以上の加熱、あるいはマイナス20度以下で24時間以上の冷凍によって死滅します。しかし家庭用冷凍庫は、マイナス18℃の場合が多いので48時間以上の冷凍が必要です。
またアニサキスの大きさは1.5cmほどあり目視が可能ですので、調理や食事の際に気をつけることも得策でしょう。
アニサキスはよく噛めば大丈夫ですか?
アニサキスは毒素を持っておらず、傷つくとすぐに死ぬため、食べ物をよく噛むことは効果的な予防法です。
しかしアニサキスアレルギーを持っていると、食事中に症状が出る場合があります。その際は早急な受診をおすすめしております。
アニサキス症に正露丸は効きますか?
正露丸は、アニサキス食中毒の予防や軽減に役立つと考えられています。
きっかけは2021年Pharmacologyという雑誌に発表された論文で、正露丸の主成分である「木クレオソート」がアニサキス幼虫の運動を阻害する効果が示されたことにあります。 ただしアニサキス症の治療効果については明記されておりませんので、正露丸の使用方法についてお困りの際はお気軽に当院へご相談ください。